レポート

「パフォーマンス・マネジメント革新フォーラム2016」開催レポート

人事評価の新たな潮流を探求する
米国の先進企業55社は、なぜ評価段階付けを廃止しているのか?
何を目指しているのか?

開催レポート

日本初のイベント『パフォーマンス・マネジメント革新フォーラム』を、 2016年3月18日、お茶の水のソラシティにおいて開催いたしました。近年、米国を中心に「評価段階付けを廃止する(ノーレイティング)」という動きが人事評価制度(パフォーマンス・マネジメント)の新しいトレンドとして注目を集めています。こうした動向の背景にある哲学や原理、目的について探求した7カ月に及ぶ研究会の活動報告と、GAP、GE、Microsoftという世界をリードする先進企業の実践者による現在進行形の事例共有により、経営者、人事担当者、人と組織に関わる専門家の方々約180人とともに学び合うフォーラムとなりました。

レイティングをやめる企業が増えてきた背景と意味

最初は、ヒューマンバリュー代表取締役副社長で研究会事務局長の阿諏訪から、不確実性が高まる時代背景の中でビジネスに関わる変化のトレンドや、ニューロサイエンスの発展で「グロースマインドセット」の重要性が明らかになったことにより、パフォーマンス・マネジメントの革新の潮流が生まれていること、研究会の活動の中で明らかになってきた「5つのポイント」についてお話しさせていただきました。

海外のパフォーマンス・マネジメントの最新動向

続いて、パフォーマンス・マネジメントの最新動向について、海外で開催された2つのカンファレンスで話題となった情報を、それぞれのカンファレンスに参加したヒューマンバリューのメンバーが紹介させていただきました。

ヒューマンバリューの川口からは、パフォーマンス・マネジメント革新の背景にあるニューロサイエンスの進化の動向を確認するとともに、昨年ニューヨークで開催されたNeuroLeadership Summit 2015の概要や議論されていたトピック、参加者や雰囲気などについて紹介しました。

ヒューマンバリューの霜山からは、ニューロサイエンスの研究成果の中でも、特にパフォーマンス・マネジメントの革新に影響を与えている研究成果として、「SCARFモデル」についての説明がありました。

ヒューマンバリューの佐野からは、パフォーマンス・マネジメントがメインテーマだったSIOP Leading Edge Consortium 2015の紹介とともに、数々の事例の中から、パフォーマンス・マネジメントは手段であって、その前提となるフィロソフィー(戦略やありたい姿の実現)が大事であることを紹介しました。

ヒューマンバリューの長曽からは、海外事例から読み解いた新しいパフォーマンス・マネジメントのポイント(生成的な変革プロセスによる推進、カンバセーションの重視、報酬に対する捉え方、人事の役割や制度のあり方のシフト)について紹介しました。

日本における先行的な実践の共有

ギャップジャパンの佐藤陽子氏から、現在取り組んでいる「GPS:Grow, Perform, Succeed」の取り組みについてご紹介いただきました。年度末評価を本当にやめたという話で会場は盛り上がり、実際の従業員の声の紹介では会場は静まり返って、佐藤氏の話を真剣に聞き入っているようでした。

GEの谷本美穂氏は、パフォーマンス・マネジメントがGEの大きな変革の一部であること、またGEが変革に至った経緯、そして現在の取り組みについて丁寧にご紹介いただきました。失敗を恐れない文化への転換、自分たちの顧客の定義についてあらためて考えたこと、評価にこだわったマネジメントからコンテンツにこだわることの重要性などお話しいただきました。

マイクロソフトの佐藤千佳氏から、マイクロソフトのここ数年の状況から現在までの変革への取り組みまでの経緯のお話とともに、この取り組みを通して得られた佐藤氏の視点からの気づきも共有いただきました。「いろんなものを完璧な状態にして落とす時代ではなくなったのかなと。このやり方自体がカルチャーを変えていくことになったのかな」という言葉が印象的でした。

事例紹介を聞き入る会場の様子

事例発表いただいた3名とのダイアログ

3社の事例共有の後、登壇いただいた3名の方々とヒューマンバリューの阿諏訪を交えてダイアログを行い、会場からのニーズが高かった評価と報酬についての各社のお話や、企業文化を変えることについて各社でどのように取り組んでいるかなど、あらためて探求しました。マイクロソフトの佐藤千佳氏からは、「お互いがこんなに近いことをしているなら、もっと前から一緒に情報共有すればよかったわね」といったお言葉もありました。

日本における可能性の探求
パネルディスカッション&ダイアログ

モデレーターの土屋恵子氏の進行で、パネリストそれぞれの方が研究会に関わった経緯や、研究会での気づき、また今日一日の中で印象に残ったことについてダイアログを行いました。

会場の参加者のダイアログ風景

ラップアップ

最後に、ヒューマンバリューの兼清が過去30年のパフォーマンス・マネジメントの歴史を振り返り、ピーター・ドラッカーのMBO(目標による管理)の導入や、その後の成果主義の導入においても、本来の意図と実態とに乖離があったことに触れ、今回の新たな潮流において同様のことを繰り返してはならないと述べました。そのためには、最初から完璧なものを導入しようとするのではなく、エビデンスベースド、つまり本当にその施策が効果的なのかを確かめながら徐々に完成度を上げていくような導入をイメージしたいというメッセージを述べ、忙しい時期に終日イベントに参加してくださった会場の皆様に感謝の意を申し上げて、会場とともにチェックアウトとさせていただきました。

まとめ

今回のイベントの準備段階から、これまでにない枠組みの内容であり、また大事にしたいメッセージが難しいこともあり、参加者の皆様の反応が気になっていたのですが、一日を通して集中力の切れない会場の雰囲気や、徐々に前のめりになってダイアログされている様子を見て、これから何か新しいものが生み出だされるエネルギーが高まっていることを感じることができました。このイベントをきっかけに日本での新たなパフォーマンス・マネジメントの幕開けになることをスタッフ一同願っています。またヒューマンバリューとしても、そうした皆様と共にすばらしい未来を共創してきたいと思います。

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